【入鹿池】
■所在地:愛知県犬山市 ■取材日:2013年6月25日 ■公開日:2014年10月某日
■ここに紹介する「入鹿池」に訪れたのは平成25年、季節は初夏といったところだろうか。そんな印象が強く残る、比較的良い天候であったのを記憶している。
仕事の休みをうまく利用し、愛知県と岐阜県の心霊スポットを1日で片っはしから巡る、それこそ“弾丸ツアー”的に駆け足で取材した事があった。そんな慌ただしかった取材の中の1つの現場が、この入鹿池なのである。
■入鹿池に辿り着いたのは、正直に言うと実は偶然なのであった。と言うのも、取材の予定として入鹿池も候補に挙がっていたのだが、相当無理のある取材工程であったため、入鹿池は止む無く除外して、他の心霊スポットを取材した。で、そろそろ帰らねば翌日の仕事に差支えてしまう時間となり、ナビを自宅へセットして進む道中で
「あれ?何だか覚えのある雰囲気だな…」
と思い、窓越しの景色を何気なくチェックしたら、まさかの入鹿池であった…という訳である。さすれば「取材しない手はないだろう」という事になるのは当然の成り行きで、慌てて車を停めて現地撮影を始めたというのが正直なところなのである。
そんな具合で心構えも全く出来ていない、実に慌ただしい取材となってしまったのだが、深夜の現地は実に寂しげであったのは良く覚えている。取材ポイントを「入鹿大橋」という赤い橋の周辺の限定しての取材となったのだが、その橋に設置されている照明設備のお蔭で怖さは半減だ。深夜でありながら、時折自動車も通過し、そういった意味でも恐怖度は低いだろう。しかし、それでも何とも言えない切なさを感じさせる雰囲気が、ここ入鹿池にはあった様な気がしている。
…といって私の感覚など、大して当てにはならないのだろうが…。
■入鹿池の事を簡素に説明している解説板だ。
「入鹿六人衆の協力により造られた」と記載されている。その奥に微かに入鹿池の湖面が見えるのだが…。
■ここでの噂は、路地裏の戦慄の心霊スポット:愛知県に書かれている通り、何やら「夜な夜なトランペットの音色が聞こえてくる」といったものが代表的だそうだ。本来なら誰もいないはずの深夜の池周辺で、唐突にトランペットの音色が聞こえてきたのなら、確かに良い気にはなれないだろう。私が住む家の近所にも、夜な夜なトランペットを奏でる何者かが存在するらしく、違った意味で良い気がしない。
そんな個人的な近隣の文句はさておき、この寂しげな空間でその音が聞こえてきたら間違いなく恐怖を感じるだろう。しかし残念な事に、当日の取材ではその“トランペットの音色”が聞こえる事はなかった。聞こえてきたのなら、即体験談にて掲載だったのだが…。
それにしても“トランペットの音”というのが余りにも具体的過ぎて、どうにもリアリティがあり過ぎる気がするのも正直なところだ。戦慄の心霊スポットにも書いてある通り「実は近所の学生が夜間にトランペットの練習をしていた」というオチが本当のところなのだろう…。
それはともかくとして、心霊スポットという観点から入鹿池を観た場合、過去に水害による犠牲者が多く出たという負の歴史は外せないだろう。明治元年4月の終わり頃から大雨が降り、翌月の5月13日に堤が耐え切れず決壊した。下流での被害は尋常ではなく、1000人近くの死者がでたそうだ。その水害は「入鹿切れ」と呼ばれ、現在でも語り継がれている悲しき歴史なのである。
その辺の経緯が、現地での霊的な噂の背景となり得る大きな要因だと私は思うのだが、それがトランペットの音色とは…。
またその「入鹿切れ」には、様々な伝説があるそうだ。大まかに、何かしらアクションがあり、その後に雨が降り始めたり堤が決壊したりしているのが特徴である。個人的に着目しているのは、やはり決壊直前に「火柱が見えた」や「火の玉が見えた」といった、いわゆる「怪光現象」だろうか。大きな災害の前には、そうした超自然的な現象が起きるとは良く聞かれる事であり、そんな現象もいずれ科学的に証明され、予知される未来が訪れてくれる事を願ってやまない。
また、ここでは近年に「貸しボートが転覆事故」といったものや「女子高生が受験を苦に橋から飛び降り自殺」といった事故が起きているそうだ。その橋が、ここに紹介している「入鹿大橋」であったかどうか、正直なところ把握はしていない。しかし、この入鹿池には入鹿大橋の他「郷中新橋」という橋の2つしか恐らく存在しておらず、その2つの位置関係は比較的近い。また、一説によれば「自殺以降、赤い橋付近で自殺者と思わしき霊が目撃される様になった」とある。赤い橋となれば、まさに入鹿大橋に他ならない訳で、
「なるほどこの寂しげな雰囲気は“これ”が要因なのか」
と、偉そうにも納得してしまったのであった。しかしながら再三書くが、言うまでもなく私のそんな感覚は当てにはならないのである…。
巡霊者:心霊スポット取材記:愛知県【入鹿池】現地写真
■現地で“赤い橋”と呼ばれる「入鹿大橋」の姿。
この橋の脇には、歩行者用の端も設けられていた。
■間違いなく「入鹿大橋」である…といった感じの写真。
露出の具合で明るくなってはいるが、現地はもう少し暗かった。
■入鹿池の歴史が詳しく書かれているだろう案内板というかモニュメント。
しっかりと照明が反射しており、拡大しても何が書いてあるか殆ど分からないのが残念なところなのである…。
■して入鹿池の湖面の写真だ。
今にも火柱だか怪光だかが現れそうな雰囲気だと思うのは気のせいだろうか?
■そんな事を思っていると、本当に怪光が!?
…いやいや、実際は対岸の照明でったというオチなのである。
■以上が入鹿池における現地取材記となる。先にも書いた通り、たった1日で愛知県と岐阜県の心霊スポットを回ったモノだから、それぞれの心霊スポットでの現地取材が疎かになってしまったのが、今となっては実に口惜しい部分である。2県にまたがっての取材を1日で…なんて考えは、今後は絶対に止めておくべきだと改めて思うとともに、そういった部分で勉強となった取材でもあった。
何はともあれ、この際に機会があれば愛知県・岐阜県ともに、じっくりと巡りたいと企んでしまうのである。その際には入鹿池にも立ち寄り、もしかしたらそんな時に「あの音色」が聞こえてくるのかもしれない…。