【八木山橋】
■所在地:宮城県仙台市青葉区〜太白区 ■取材日:2015年10月16日 ■公開日:2018年3月某日
■仙台市青葉区の八木山といえば、仙台城跡(青葉城跡)や竜ノ口渓谷(たつのくちけいこく)や、「青葉城恋歌」といった名曲などを思い浮かべる。
その美しい竜ノ口渓谷に架けられた橋が、ここに紹介する「八木山橋」だ。この橋もまた、観光地として非常に有名なのだが、周囲の渓谷美や紅葉の美しさとは掛け離れた
“自殺の名所”
という負の印象もまた、是非はともかくとして名が通っている。果たしてどれほど有名なのかといえば、八木山橋の存在を知らなかった頃の私が
「え?何それ?」
と聞くと、
「え、知らないんですかぁ?」
と、軽く詰られてしまう程にメジャーなスポットなのである。この類のサイトを運営している者としては「知っていて当然」といった事を伝えたかったのだろう。悔しくも恥ずかしい、サイト運営を開始して間もない、ほろ苦い記憶でもある。
■そんな思い出話はさておき、「自殺の名所の橋」というキーワードで思い出されるのは、神奈川県の「虹の大橋」や「打越橋」、長野県の「軽井沢大橋」などが有名だろうか。この八木山橋も、それらと同様に自殺者の霊が漂い、更なる自殺者を呼んでいるとのことである。自殺防止のためと思われる物々しいフェンスも、そういった類ならではの共通点といえるのではなかろうか。
この八木山橋では「顔の半分が崩れた女性の霊が出る」といった情報があるが、こういった霊は、恐らく自殺者が浮かばれずに出現したのだろう。また、現地に訪れた際に突然体調不良に襲われたという事例もあるそうだ。私も虹の大橋に出向いた際に、腹痛という現象に悩まされた事があるので、この事例は何となく分かる気がする。
そんな八木山橋に実際に訪れたのは、2015年10月の頃であった。仕事が暇になるタイミングを見計らい、慌ただしくスケジュールを組んで各地方を巡るのを、ここ数年繰り返している。この八木山橋の取材もその1つで、宮城県における取材の1番目の現場である。
■八木山橋到着後、最初に撮影したのがこの写真。
この通り、取材当時(2015年)は補強工事をしており、歩行者のスペースには仮設のガードレールが設置されていたので、歩くスペースが狭かった。
橋の手前と向こう側に照明があるのが有難いといえば有難い。
■現地に到着したのは、まだまだ暗い時間帯であるのは紹介している写真からも分かる事だろ。実際には早朝の5時といったところだろうか。夜明け前の現地は暗く、何とも心細い。照明設備等が橋の両方の袂に設置されてはいるのだが、やはり暗い。宮城県における、最もメジャーな心霊スポットといっても差し支えないであろう、この八木山橋を初めて前にして、この橋が持つ雰囲気と周囲の暗さとが相まって、何とも言えぬ恐ろし気な気分を味わったのを記憶している。
時折通行する自動車に、現地で孤独ではないという安堵と、せっかくの恐怖感を奪われてしまう喪失感との微妙な心境のなか、橋を渡ってみた。取材当時は、耐震補強工事の最中であったため、歩行者のスペースにガードレールが仮設されていた。また、そこに設置された点滅灯が“チカチカ”としていて、これがまた別の意味で微妙な雰囲気を醸し出している。昭和40年に完成した橋なだけに、経年劣化は止む無きところだろう。
その“チカチカ”を横目に橋を歩く。もともとの欄干に、後付けされた白く高い鉄柵が、自殺スポットである事を物語っている。時間帯も相まって雰囲気はなかなかななものだ…が、やはり横で定期的に発光する“チカチカ”に、何というか、やや興ざめといった心境というか、恐怖度2割減といった感じなのだろうか。とにかく、微妙な心境ではあったのだが、妙に嫌な雰囲気を感じてならない。
といって、結果から言ってしまえば、体験談に公開できる様な怖い体験をした訳ではない。ではないのではあるが、何だか何かが起きそうな雰囲気がある様な気が、取材時に感じていた…。要するにビビりながらの取材なのであった。なので、“チカチカ”は、ポジティヴに捉えれば、そのビビりを和らげてくれる効果があったという訳である。
そんななか、橋の反対側に到着すると、唐突に「熊出没注意」という警告板が目に入った。しかもご丁寧に、熊のシルエット付きと来たものだ。熊の襲撃はさすがに恐ろしいし、万が一遭遇して戦ったとしても、勝てる見込みは皆無に近いだろう。
「いやいや…別の意味でも怖くなってきたぞ…」
なんてことを思いつつ、その警告板の下を何気なく見てみると…、そこには比較的新しい花束が供えられていた。
「!?」
言葉なんて当然出ず、ただただ絶句するだけであった。この花束の意味は、果たして何なのか?自殺の名所における花束といえば、それは…。
巡霊者:心霊スポット取材記:宮城県【八木山橋】現地写真
■到着したのは青葉区側。
橋名板に記された、この文字と、その背後の鉄柵と、との等間隔に並んだ鉄柵に張り巡らされた有刺鉄線に、八木山橋に来たんだという実感が沸いてくる。
■いきなり飛んで、橋の太白区側。八木山ベニーランド側といった方が分かり易いだろうか。
こういった熊の出没に対する警告板は、近年の地方の心霊スポット巡りにおいて頻繁に目撃する気がする。しかし、それに慣れる事はなく、この取材時も、思い切り緊張したのを覚えている。
■熊の警告板より緊張させられたのは、この橋の袂のバス停脇の花束であった。
心霊スポット取材において、こいった花束などに出くわすのは意外に少ない。そんな数少ないエピソードに、思い切り寒気を覚えた記憶が、今も強烈に残っている…。
■橋の袂にあった石碑。どうやら木田鋼業所の竜ノ口坑の開坑と、その発展から閉鎖までを記した記念碑であるらしい。
八木山橋における霊的な噂話とは離れるが、この様な歴史も当地にはあるのだと記憶しても損はないだろう。
■橋より青葉城側を望む図。両脇から上部に向かい生い茂る木々の加減が良い雰囲気を作り出している。
しかし、少々ピンボケな出来栄えとなっているのが残念なところだ…。
■上では「現地退散を考えたのであった」と書いたが、ちゃっかりその後に動画撮影の後に現地を去ったのであった。しかし、恐怖感は相変わらずのMAX状態であり、
「何か起きるのではないか」
といった事を常に考えながらの撮影であった。しかし、先にも記した通り、特別な霊体験はなかった。残念な結果といえば確かにそうなのだが、実際のところ、そこまで高確率に霊体験なんて在り得ないのが、所詮一般人の、いち心霊サイト管理者でしかない私の残念な霊能力なのである。こればかりは致し方ない部分である。
それはさておき、バス停の脇に供えられていた花束の理由。それを、この取材において調べたりはしなかったし、後に調べてもいない。理由は分からないのだが、現実として
現地に真新しい花束が供えられていた
という事実を記すに留める事としよう。個人的な思い…というか願いとしては、単なる悪戯であったらと願うばかりなのだが…実際はそうではないのだろう。
私の宮城県における初の取材は、こんな出来事から始まったのであった…。