心霊スポット:花魁淵 【花魁淵】
■所在地:山梨県甲州市塩山上萩原〜北都留郡丹波山村 ■取材日:2009年3月27日 ■公開日:2015年10月某日


■サブプライム住宅ローン危機に始まり、やがて訪れたリーマンショックによる恐ろしいまでの不景気に陥った年の翌2009年に、ここ「花魁淵」に訪れた。世間は未だリーマンショックの影響で不景気は続いており、かく言う私も、仕事の受注量は激減し苦悩していた。

 そんな暇な日々に嫌気がさし

「何も無いなら取材に行こう」

といった悲しさを背景に、この有名な心霊スポットに訪れたのであった。なので様々な意味で非常に記憶に残る取材であった。
 余談なのだが、このリーマンショック後に襲った我が家の影響は尋常ではなかった。下手をすれば家庭崩壊まで進んでしまったかもしれないのだが、何とか薄皮一枚、はたまた土俵際で何とか踏ん張り、家庭だけは守る事が出来た。

■そんな辛い背景があるせいか、現地撮影したデータは、日中でありながら全体的に何処となく暗めな雰囲気を感じてしまう。しかし、そんな時代背景が現地の雰囲気を悲しみ色に染める事は、さすがにないだろう。おそらく新芽が芽吹く前の3月という季節に、裸の木々の独特の悲しさが演出しているのだろう。心霊スポットを昼間に撮影するのなら、実はこんな寒い季節が向いている様な気がする。あくまでも個人的な意見なのだが…。

 この花魁淵の存在を知ったのは、1996年発行の故・池田貴族氏の著書「池田貴族の心霊通信(ごま書房)」である。各章により様々な霊的なエピソード等を紹介しているのだが、その中に心霊スポットを紹介している章があり、その中の1つに花魁淵が紹介されていた。ちなみに、この書籍では「おいらん渕」である。
 この書籍によれば、この書籍が発売されるよりさかのぼること十数年前、野外教室で現地を訪れていた小学生たち大勢が、溺れてしまうという事故があったそうだ。その小学生のコメントも紹介されているのだが、それをそのまま引用すると

「着物を着たお姉さんたちが、足を引っ張って、離してくれなかった」

そうである。「着物を着たお姉さん=おいらん」と関連付けた紹介である。ただし、その足を引っ張られた場所がと、その書籍にて紹介されている「おいらん渕」が完全に一致しているのかは不明だ。また氏は遊女が「身投げをした場所」と説明しているのだが、現地案内板によれば

「宴台を吊っていた藤づるを切って宴台もろとも渕へ沈めて口封じをした場所」

と、若干の違いを見せている。また、この凄惨なエピソードにより、現地が「おいらん渕」と呼ばれる様になったとも案内板には記載されている。もはや心霊スポット好きな面々からすれば、有名すぎる内容だとは思ったのだが、一応記載しておこう。

 また、ここより伸びる国道411号線は、非常に曲がりくねった道となっており自動車による事故も少なくなかったらしい。現地には「祈交通安全」と書かれた供養塔が建立されている事からも、それが伺える。
 その事故の要因も、実は花魁淵の霊の仕業であるといった噂も聞かれる。その妖力は、川を這い出て横を延びる道にまで影響を与えているといったところだろう。花魁の霊力や恐るべしである。

心霊スポット:花魁淵

■国道411号線の道端に小規模な駐車スペースがあり、そこに忽然と供養塔が建っている。ここ花魁淵の目印ともいえるだろう。
「祈交通安全」と書かれている通り、この周辺では交通事故が多かったのだろう。しかし、この取材記がUPされた2015年の時点で、ここで交通事故の可能性は極めて低い。何故なら現在ではここは基本的に立入禁止となっているからだ。


■さて、実際に現地入りした際の周辺の雰囲気なのだが、何と言うか

「冬の終わりの頃の寒さに冷え切った谷底の冷たさ」

といった感じさろうか。天候は比較的良かったのだが、何とも言い知れぬ悲しい雰囲気と、あとはけたたましく響き渡る滝の音による不安感。それらが交わり独特の印象を私に与えていた。それに加え、リーマンショックによる不景気における我が家の不況と、それによる慢性的な精神的な不安感もあって、晴れ晴れした写真を今になって見直しても、何とも複雑な気分にさせられる。
 霊云々ではなく別の恐怖感が強烈に蘇るという訳だが、その恐怖に関しては路地裏では専門外なので、以降は記載するのを止めておこう。

 供養塔の存在や、案内板の設置に、大きな音を響かせる滝「銚子の滝」の存在から、この場所が「花魁淵」と思ってしまうのだが、どうやら別の場所に「真の花魁淵」が存在していると言われている。供養塔の建っている場所から上流へ300m程進んだ場所辺りが「そこ」らしいのだが、大した目標物もい。強いて挙げるのならば「藤尾橋」という古びた橋があるだけだ。そういった場所に比べ、豪快な滝や案内板の設置、それになおかつ駐車スペースも存在している訳なので、訪れる際にはどうしても供養塔の周辺に集まってしまいがちになるのも無理はない。
 そうやって人が多く訪れる場所なのだからこそ、そこで霊的な体験談や噂話が徐々に聞かれる様になり、やがてその場所をもって「花魁淵」と呼ばれる様になったのだろう。

 そんな花魁淵なのだが、残念な事に、その場所に訪れるのは不可能となっている。以下に紹介する写真にもある通り、山腹に新たなトンネルが建設され、その完成と共に道路が新たに通されたのだが、それに伴い、このページに紹介している各所へ立ち入る事は基本的にNGとなってしまったのである。取材中に建設最中のトンネルや道路を見ながら

「まさかな〜」

とは思いはしたのだが、まさか完全に立入禁止となるとまでは予想できなかった。少なくとも、徒歩でなら見学は可能といった程度だと安易に構えていたのが正直なところなのだが、まさか完全に立入禁止になるとは…。

 残念でならないのではあるが、現実は現実として受け入れねばならない訳で、こうなる前に取材出来た事に有難さを感じる訳なのである。リーマンショック直後における、唯一の良き材料なのである…。

巡霊者:心霊スポット取材記:山梨県【花魁淵】現地写真

心霊スポット:花魁淵

■現地を知る上で欠かせないのが、この案内板の存在だ。
心霊スポットに限らず、各所を巡った際には確実に写真等に収めておきたい必須項目だ。近年ではデジカメの他、スマホという強力な記録媒体の存在が心強く、また実に有難い。

心霊スポット:花魁淵

■こちらは「銚子の滝」の写真だ。
豪快に水が流れ、その音は相当なもので、心地よさより不安を感じる方が圧倒的であった。

心霊スポット:花魁淵

■すぐ近くには「一之瀬川橋」があり、花魁淵を紹介する上で、併せて紹介したサイトも多いと思う。
今や無謀な事をせねば見る事の出来ないレアなものとなってしまった。

心霊スポット:花魁淵

■本文中にて紹介した「藤尾橋」の写真。
この橋より更に上流へ進めば「真の花魁淵」となるそうなのだが、厳密に「ここだ」という分かり易いもの(例えば標識とか)がある訳ではない。

心霊スポット:花魁淵

■当時建設中であったトンネルの写真。
「一之瀬高橋トンネル」という名称らしいのだが、まさかこのトンネル&新道の完成と共に花魁淵へと向かう手段が完全に断たれてしまうとは。
残念極まりない事である…。


■そんな訳で、今となっては訪れるのが基本的に不可能な花魁淵の紹介は以上となる。

 現地に立ち入る事が不可能となった今、第二・第三と取材記が続く事はないとは思うのだが、この国道411号沿いには、ここの他に「おいらん堂」という、亡くなった遊女の霊を祀った祠がある。本来ならば、この花魁淵の関連として紹介したかったのだが、この場所を取材当時には完全に把握しておらず、捜した挙句に結局断念してしまったという残念な結果となってしまったのであった。思えば実に残念な事なのだが、もっとも私の住む東京から、そう遠くもないので、また来れば良い事だし、そんな機会に恵まれた暁には、花魁淵の第二弾として、取材記としてまた掲載してみようと考えている。

 しかしながら、肝心な花魁淵が完全に立入禁止となった今、他を差し置いてまで「おいらん堂へ行こう」という心境になるかは微妙ではあるのだが…。

 立入禁止とされてしまった事実を恨むばかりなのである…。


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