【大中寺:その1】
■所在地:栃木県栃木市大平町 ■取材日:2005年4月28日 ■公開日:2015年9月某日
■ここに紹介する「大中寺」は、「七不思議の寺」として非常に古くから噂の聞かれる歴史ある不思議スポットだ。そんなスポットに「いつかは訪れてみたい」とは、その類の書籍を幼少から目にしていれば、おのずと夢見るのも必然と言えば必然…かもしれない。
■そんな大中寺に訪れる機会に恵まれたのは2005年の事であった。案内して下さったのは、今はなきサイト「異界への招待状」管理者のやっくん氏である。
「歴史あるスポット」とは上にも書いたが、では果たして、どれ程に古いのかと言えば、例えば私の所有する心霊スポット関連の書籍コレクションの中で一番古い「お化けの住所録(著者:平野威馬雄)」において、ここ大中寺での霊的なエピソードが体験談チックに掲載されている。
この書籍は、昭和50年6月30日に発行されたものだから、今(2015年)から40年前という事になる。私がまだ4歳の頃なのだが、その頃には既に霊的なエピソードが語られていた事訳だ。さすがに4歳の頃に心霊スポット系の本を読んではいなかったので、私がこの情報を知るのはもっと後になるのは言うまでもないのだが、ともかくそれ程に古くから語られている場所なのである。
■この大中寺は、七不思議の他にアジサイも見所だそうだ。
私が訪れた時は残念ながらアジサイのシーズンではなかったので、その花を見る事は出来なかったが、より良い写真を求めるなら梅雨の季節を狙って訪れてみるのも良いだろう。
■この大中寺の七不思議は、これから紹介する写真およびその案内にて紹介するのだが、大まかに
・油坂
・枕返しの間
・根なしの藤
・不断のかまど
・東山一口拍子木
・馬首の井戸
・不開の雪隠
となっている。どれもこれも霊的な“何か”を感じてしまう。
この七不思議の中でも有名なのが、「根なしの藤」ではないだろうか。江戸時代に書かれた作品「雨月物語」の中の1つに「青頭巾」というのがある。その舞台が、ここ大中寺であり、そのエピソードと「根なしの藤」が関連しているのである。平野威馬雄氏も、このエピソードを口火にして内容を書き上げている。
青頭巾の内容を簡素にまとめれば、ある寺の僧が寵愛していた稚児が死に、それに悲しみ続けた僧が、やがて精神に異常をきたし、その稚児の屍を食してしまう。そうして“鬼”と化してしまった僧は、付近の墓を暴き死肉を食らう様になり人々はその鬼を恐れた。
その鬼を退治させるべく立ち上がったのが改庵禅師である。被っていた青頭巾を僧の頭にのせ、
「入江を月が照らし、松の木に風が吹く。永遠に続くかのようなこの清らかな夜は、一体何のためにあるのか」
と、鬼と化した僧に説いたのであった。
それから1年後、鬼に青頭巾を被せた場所へ訪れると、何と鬼は青頭巾を被ったままの姿で禅師が説いた「入江を月が照らし〜」を低い声で呟いていた。そこで持っていた杖で青頭巾を叩いてみると、鬼の体はしぼみ消えてしまい、青頭巾と骨だけが残ったという。
以上が思いっ切り簡単にまとめた青頭巾の内容だ。また、その鬼の霊を葬うための墓標としてさした杖が成長したと言われるのが根なしの藤という訳である。
なかなか恐ろしい話だと思うのだが、冷静に考えてみると、実は霊的なエピソードではなくカニバリズム系の恐怖談義である事に気付く。なので、心霊スポット的に書いてしまうのは如何なものかとも思うのだが、平野威馬雄氏の書籍によれば、未だに青頭巾の霊が出ると記されている。
巡霊者:心霊スポット取材記:栃木県【大中寺:その1】現地写真
■山門をくぐり、その先に一直線に続く参道には階段が見える。
奥に見られる階段が、七不思議の1つ「油坂」である。
■油坂
ある僧侶が燈火欲しさに本堂の燈明の油を盗んで追われ、この階段からころげ落ちたのが因で死んでから、この階段を上下すると禍にあうという。
■大中寺の本堂。由来などが案内板に掲載されている。
因みに、この建物の向かって右側の客間が「枕返しの間」である。
詳しくは下の写真の案内を参照して頂きたい。
■歴史を知る上で有難いのが、この案内板の存在だ。
上杉謙信との繋がりがあり、また北条氏康と和議を結んだのが、実はこの場所であることに驚かされた。
■枕返しの間
ある旅人が寺に一夜の宿を乞いこの部屋で本尊の方に足を向けて寝たところ翌朝目が覚めると頭が本尊の方に向いていたという。
■雨月物語の「青頭巾」における禅師の杖をさしたのが、まさにこの地という事になる。
平野威馬雄氏の著書によれば、この周囲に人魂が舞っていたそうだ。
■根なしの藤
大中寺開祖快庵妙慶禅師が鬼坊主の霊を葬うため墓標としてさした杖から成長したと言われる藤の古木。