【栗谷沢ダム】
■所在地:栃木県宇都宮市新里町 ■取材日:2004年5月13日 ■公開日:2014年6月某日
■「ちんちん峠」というインパクトある通称をもつ心霊スポット「鞍掛峠」から、直線距離にして約1km程という実に近い位置関係にあるのが、ここに紹介する「栗谷沢ダム」である。余りにも近い為、鞍掛峠と同じページに紹介しても良かったのだが、どうせならと言う様な気になり、1ページ作ってみようと思い立った次第である。
■栗谷沢ダムといえば、まず最初に思いつくのは「バス釣り」だろうか。案の定というか何というか、ネットで検索してみれば、その類の情報が多く見られる。しかしながら、ここのページでバス釣りを紹介する訳にはいかない。それこそ畑違いというものだ。
という事で、ここで紹介すべき情報を以下より書いていく訳なのだが、やはり鞍掛峠と付随する心霊スポットという印象が強いのだろうか。インターネットで調べてみても、栗谷沢ダム単体となると、その手の情報は残念ながら決して多くはない。
「女性の霊が出る」
といった内容が、ここにおける主な情報だ。殺害された女性が付近に遺棄され、その女性が霊となり出現するといった内容であり、情報自体も鞍掛峠と被ってしまう。先にも書いた通り、位置的に非常に近いので、この辺も致し方ないのかな…と思えてくる。
鞍掛峠の情報が、そのまま結び付けられた感が強い当地なのだが、実は以前に単体で情報誌に取り上げられた経緯があるのは、余り知られていない情報だ。1998年に発行された栃木県のタウン情報誌「すたんぴーど」(広報社)に、「栃木心霊MAP」というタイトルで、この栗谷沢ダムが紹介されたらしいのである。私はその情報誌を直に見た訳ではない、その情報が転載された故・中岡俊哉氏の書籍「怪奇心霊写真集」(三心堂出版社)にて確認したのだが、そこには冒頭に以下の3つの情報が紹介されていた。
1:女子高生がコンクリートに生き埋めにされたダム
2:街道沿いに地蔵尊が数体並び、その数を数えると数が合わない
3:投身自殺が相次いでいる
それぞれが何処かで聞いた事のある様な内容なのが何とも言えない。また女子高生とコンクリートの関連が、あの事件を連想させ恐怖を煽っている感もあるし、お地蔵様の数が合わない情報は、同県日光市の「化け地蔵」そのままだ。また投身自殺をするには残念な程に役不足なのは写真でも分かると思う。
その書籍の文中では、更に
「この先の峠には(中略)山に捨てられた女性の霊が出る」
といった情報も紹介されているのだが、それは間違いなく「鞍掛峠」の事だろう。
書籍では、栗谷沢ダム取材時に起きた不思議なエピソードも紹介されていた。取材道具の入っていたバッグをコンクリートのダムの上に置いて取材したのだが、風も吹いていないのにバッグが、ダム下の水路に落ちてしまったそうだ。ダム下の水路と書くと、さぞかし落差がありそうなのだが、実は容易に降りられる程の段差しかないらしく、無事に取材道具を回収したそうだ。
きちんと置いた物が落ちてしまうといった事は、実は日常でも経験する事かもしれない。ただ、そのコンクリートに「生き埋めにされた女性がいる」という情報があっただけに不気味に感じたのだろう…。
■平日の午前中という事もあってか、私が訪れた時には釣り客の姿もなく、ある意味で取材日よりであった。
栗谷沢ダムのダム湖という事になるのだが、見ての通り「池」といった方がしっくりくる大きさだ。
また上の写真では非常に分かり辛いのだが、赤い橋が架けられている。
■前述の書籍には、周辺の家々に出向き地元住民への聞き込み取材も記載されていた。それによれば、この付近にて死体遺棄事件が実際に起きていたそうだ。その事件以降、奇妙な噂話が聞かれる様になったそうだ。
死体遺棄現場が、栗谷沢ダムと鞍掛峠を結ぶ「新里街道」沿いの林道を進んだ山中だという。その事件は文中にて「10〜20年前」と書いてあるので、最短で考えても1988年となる。その当時は「鞍掛トンネル」は開通しておらず(因みに1997年に開通)旧道が旧道でなく現役であったのは説明するまでもない。即ち、鞍掛峠における霊的情報は、この書籍によれば真実であるという訳だ。
と同時に、この書籍の情報を整理すると、栗谷沢ダムを心霊スポットとして紹介しながらも、暗に「鞍掛峠が真の心霊スポットである」と綴っている様に思えてくる。実際にその意図があったかどうかは不明だが、解釈する側である私は、少なくともそう思った。
そういった事が要因になってかどうか実際には分からない。しかし、現在において先の通り鞍掛峠に付随するスポットとなっているその理由は、私が思うにそれが要因の1つとなっているのだと解釈している。
因みにだが、この栗谷沢ダムおよび鞍掛峠の情報を掲載した、故・中岡俊哉氏の書籍を読んだのは、実はこの取材後であった。何の気なしにコレクションの書籍に目を通していたら「ありゃ?」といった具合で見つけてしまったというのが実際のところ。なので、その書籍情報が全く役に立っていないカメラワークとなってしまっているのが、実に残念なところであり、実に惜しまれる部分だ。
巡霊者:心霊スポット取材記:栃木県【栗谷沢ダム】現地写真
■赤い橋から下の湖面を撮影。
黒く見えるのはオタマジャクシの大群だ。
「うじゃうじゃ」と蠢いていて不気味であったのが印象的であった。
■赤い橋は他にもあったと記憶している。
上の橋は左のものとは別の橋だ。
それにしても小規模な橋である…。
■この小さな川から注がれた水がダム湖を形成している。
水の流れが心地よかった様な記憶がある。
■人の姿は皆無であったが、野鳥の姿を見る事が出来た。
我々の姿を見て、そそくさと逃げる姿もまた滑稽だ。
■栗谷沢ダム湖の全景写真といった感じだろうか。
何となくもの寂しげな雰囲気は、当時の天候の仕業なのか、それとも…。
しかしそれにしても、その書籍を事前に読んでいれば、もう少し違った写真も撮影出来たろうに…。
実に残念なのだが致し方ない。正に「後悔先に立たず」なのである。
■そんなこんなで、惜しまれる点の多い取材であったのが、この栗谷沢ダムおよび鞍掛峠での取材だ。ならば「再び訪れれば良いのでは?」とは誰もが考える事だろうし、私もそんな気になってくる。もし栃木に出向く機会があれば、恐らく足を運ぶ事になるのだろう。しかし、それを躊躇させる情報も、実はその書籍に書かれていた。
地元住民へのリサーチの末、事件現場を特定し、そこへ向かおうとする取材者に対し、住民がこんな事を言ったそうだ。
「よしなよ、お兄さん。そんな事ばかりしていると変なモノがついて気が狂っちゃうよ」
この言葉に、その取材が“行われてはいけない取材である”と察知し、その場所へ向かうのを断念し、現地を去ったのである。
その取材者が故・中岡氏であったかは文中では明記されていないのだが、恐らくは氏なのだろう。その筋では著名で経験豊富も豊富、なおかつ私のルーツと言っても強ち間違いではない、その氏が断念する位なのだから、何かしら強い“モノ”があったのだろう。そう考えると、実は後からその情報を知った方が結果として良かった事になったのかもしれない。
とは言いつつも、その現場に近い場所まで行ってしまったのも事実。10年の時を経た今、自己判断では自分は狂っていないと思っているのだが、客観的にはどうなのだろう…。
考えてもみれば、仕事の休みを見計らい、地方へと足を運び、一般の人が余り寄り付かない心霊スポットを、それこそ何かに取り憑かれたかの様に1日に何現場も巡るのは、大袈裟に言えば正気の沙汰ではない。
知らず知らずのうちに、この栗谷沢ダムの近くに住む人が危惧を、間接的に知った私の身に時間をかけながら襲っていたのかもしれない…。